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HowTo企画

『プロットワーク』

index:

プロット第一回目「プロットとは何か」
プロット第二回目「イメージは全ての根元」

プロット第三回目「あらすじがプロットの中心」
プロット第四回目「プロットのまとめ方」

第四回「プロットのまとめ方」

■ プロット構築の実際

● プロットのまとまりって?

プロットがまとまっている、よく練ってある、と良く聞きますが、プロットがまとまっているとは、どんな状態との事を言うのでしょうか。
作品の全ての要素が、訴えたい方向に向いて作られていて、良く吟味されているのが、まとまっている状態と言えます。

四駒漫画や昔話は短くてシンプルなので、自然にまとまります。
一番簡単なのは「短く、言いたいことだけを一言だけ」と考えて作ること、とよく言われます。

要素の方向を揃えるのは作品が短ければ短いほど簡単で、長くなればなるほど難しいものです。

プロットのまとまりを作るのは大変難しい作業で、プロでも良く破綻します。
宮崎監督の作品で言うと「トトロ」は良くまとまっていて、「もののけ」はまとまりが悪いと言えます。

宮崎監督でも破綻させてしまうことがありますので、物語構成というのは恐ろしく難易度が高いと思ってください。
始めて作品を作る人は、まず破綻させますので、失敗は別に恥ではないと思って、果敢に挑戦するのが正しいと思います。

● 短編を破綻させずに作り上げられない人に長編は無理

プロット構成には難易度があります。
よくメガ単位の作品をいきなり書き出す人が居ますが、まず完成しません。
考えても見てください、メガ単位のテキストというのは、小説に直すとトルストイの「戦争と平和」クラスの分量なのです。よほどの才能がないかぎり、まとまる訳がありません。
プロット構成は、
・長くなるほど難しい
・キャラが多いほど難しい
・言いたいことがややこしい(抽象度が高い)ほど難しい
という特性があります。

メガ単位の大型作品を見てみますと、大抵は章立てになっています。一メガを一場面で書き出す人はいないと思います。
章立てと言うことは、章ごとに起承転結があるまとまりと言えますね。
章をさらに細かく分けると、だいたい25kぐらいの単位でシーン分けされます。
つまり、メガ単位の作品は短編が沢山つらなって出来ている物と言えます。

「えー、あの人は長編をいきなり書いてるやん」とか言う声が聞こえてきますが、世の中には才能というものがあって、「感」でなんとかしてしまう人がいるのですね。
しかし「感」で書いてると、一本目は良いですが次に続かなかったり、上手くいった流れを次作でも再生産したりで結局は袋小路だとおもいます。
メガ単位をいきなり書きだして上手くいく人は、途中で小さい構造に気がついているのでしょう。
逆に言えば構造に気がつかなければ短編を百本書いても、構成の手はあがらないとも言えます。

● 兵法と物語構成

また脱線するのですが、中国の歴史とかを調べた事がありまして、兵法書とかもしらべたんですね。
で、思ったのは、物語と戦争は似ているということでした。

戦争というのは独特の場の流れのような物があるのですね。
その流れの基本を現したのが兵法書なわけです。
たとえば「背水に陣を引かない」というのは、川とかを背にして陣を引くと、兵が逃げられないので士気が下がるという「原則」なわけです。
でも、戦争の現場では、あえて背水に陣を引き、糧秣を川に投げ捨てて、自ら窮地に立って士気を上げ、大勝したりする事もあるわけです。(楚漢戦争)
「原則」を知って、あえてそれを破るというのと、「原則」を知らずにやってしまうのは違うわけです。
また、「原則」である兵法書に忠実すぎるので、手を読まれて負けてしまう事もあったようです。(長平の戦い)

物語の作り方の知識というのは、兵法書にあたります。
物語自体が戦争にあたるわけですね。
作者と読者の戦争だったりするわけです。

物語作りの知識は「原則」として知っているべきであります。
ですが、あまり忠実だと面白みの無い固い作品となります。
「原則」を知らないと、細かい失敗を犯す危険が増大します。
「原則」を知らないで作っても、上手くいくのは「才」であります。

作品は王道(定石)と奇道(工夫)を交互に出して相手の興味を引き、意表を突いて攻めるわけですよ。

物語作りのノウハウ本が、だいたい同じ事を言ってるのも、「原則」があるからですね。
「原則」を知って、それを活用できるかどうかは、作家の才覚という物で、「知ったけど、使えない」というのは作品の空気を読むのが甘いからで、「原則」が役に立たない、というわけでは無いと思いますな。

● 実践演習を重ねる

原則と応用の関係を覚えたり、進退の呼吸を覚えるには、実践が一番です。
軍隊で演習訓練を重ねるように、物語も実際に作って、他の人に見てもらって反応をひろい参考とします。

批評を聞く心構えは結構難しい物で、慣れないと我が子を殴られたような痛みを心中に感じたりします。
これは自然な防衛反応で『自分の作った物がこんな風に言われるなんてー!!』と、ショックを受け、落ち込んでしまいます。
対策は一つしかありません、それは『慣れる』だけです。
批評を沢山貰って、悔しさや憤りに耐え続けていると、そのうち『慣れ』ます。
作品と自分は同じものでは無く、批評を聞いて作品は変更できるのだという感じに、品質を上げる指針として批評を聞けるようになってきます。
大抵の批評者は相手をやりこめてやろうと思って意見を言ってるわけではなく、作品がもっとよくなるヒントとなればと思った通りの事を言う人が多いと思うのですよ。
ですので作り手側も言われたことを真面目に受け止めて考えるのが良いと思います。

● プロット直しを怖れない

一度構築したプロットを直すとなると、かなり深い設定の変更をしたり、大幅に書き直したりしなければなりません。
「ああ、めんどくせえ」と直さない人も多いようですが、最初に作った物などは、絵で言えば下書き程度です。
バランスを取って見直し、改訂するためにプロットを立てるのですから、変更を怖れず色々な可能性を吟味するべきであります。

● 箱書きをへて執筆へ

プロットが組上がったら、箱書きをへて執筆にはいります。
箱書きというのは、プロットからもうちょっと進んで、実際のキャラの動きや気持ちの流れを書いた短文を連ねたものです。

アウトラインプロセッサというツールがありまして、ツリー型に文章を並べられる物なのですな。
これに>章タイトル>段落タイトル>箱書きと並べて書き込んでいき、構成を見直しながら執筆する方法があります。

箱書きをすると、執筆に迷いが少なくなり、作業速度があがります。
ある一ブロックで泊まったら、先のブロックを書いてから、戻るとか、作業の自由度が上がります。
難を言えば、ツリーのブロックごとで文が区切られるので、文の流れが断裂しやすくなる欠点があります。

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執筆に入ったら、プロットの動きやコンセプトを意識下におきつつ文を書いていきます。ときどきプロットと違うアイデアとかが現場で浮かんだりしますが、私の場合、そんな時は現場のアイデアを優先することが多いです。
書いてる途中で思いつくアイデアは活きが良い事が多いのですね。
ただ、現場アイデアを入れると、当初の狙いがぶれたりする原因になる事がありますので、いたしかゆしの感があります。

● まとめ

今回は「構成はプロでも大変なので、萎縮しないで取り組みましょう」という言葉で稿をまとめさせていただきます。


文責:サカナ・ノベル

プロット第一回目「プロットとは何か」
プロット第二回目「イメージは全ての根元」

プロット第三回「あらすじがプロットの中心」
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