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すろ〜ふ〜ど
HowTo企画

『プロットワーク』

index:

プロット第一回目「プロットとは何か」
プロット第二回目「イメージは全ての根元」

プロット第三回目「あらすじがプロットの中心」
プロット第四回目「プロットのまとめ方」


第三回「あらすじがプロットの中心」

■ イメージをプロットに整理する方法

● 数学みたいな概念を使って整理する

数学の歴史をちょっと調べた事があったんですよ。
そこで解ったのは、数学とは抽象的な概念を自在に動かす方法であるという事でした。数という概念を思考の中で色々加工するのが数学なのですな。

物語も数学のように抽象的に要素を取り出して、いろいろ加工するという方法があります。

キャラクターとか、物語のキーとか、事件とかをそれぞれ、要素として管理にして、並べ換えたり、削ったり、足したりして、まとめていく訳です。
大まかに作品全体を捉えていると見えなかった事も、要素分解すると解ってきたりします。

● 要素を規定する

メモ帳とかエディタに要素を書き出します。
私はPlanningFlow(indysoft)というフローチャートソフトを使って要素を分解しています。
主に作るのは、
・ お話の人間関係に関する特記事項を並べた物
・物語の流れ図
・時間経過とそれぞれのキャラが何をしていたかの表
の三点が多いですね。

人物特記事項図例(熱核少女

日付チャート(魔法少女サカナ0)

要素を書きだして行くと、設定を詰めないといけない所が解ったり、存在してるけど実は必要の無い部分なんだということが解ったりします。
これらの作業は、執筆前の仮組みたいな物で、なるべくやっておくと後が楽です。
ただ、執筆中に話の流れが変わったりした場合に、まったくの無駄になる時もあります。

この方法を突き詰めて行くと、プラモデルの部品を作って組み立てていくように物語作りを作っていく事が可能です。
可能なんですが、だからと言って確実に面白い物が作れるという訳ではありません。
利点は物語が大きく破綻しにくいという事だけです。

● テーマは無いと不便です

「俺には語るべき崇高なテーマを持たない、だから物語は作れないのだ」とか。
「俺の作品のテーマは人類愛だ。だから凄いのだ」とか。
そんなふうに テーマについて勘違いしている人が居るのですが、テーマというのはそう言う物ではありません。

語るべき物が中心にないと、話がまとまらないのでテーマを入れるのであって、普通の場合テーマを言うために物語を作るわけではありません。

「どうしても原爆について書きたいのだ!」とか強いテーマを持っている人はそれに向かって邁進すれば良いのですが、凡夫である我々は強いテーマをあまりもってないんですね。

普通に作る場合は、作品の中心軸になるべき一言を設定します。
例えば「恋っていいもんだよな」とか、「喧嘩は良くないよね」とか、ごく普通の事で結構であります。
キャラクター中心の物語の場合は「その子を魅力的に書こうではないか」がテーマとなります。
テーマが見えないと、「作者はこの物語で何を言おうとしてるのだろう」という疑問を読者に湧かせてしまいます。

話の軸に使うだけなのでなんでなんでも良いんです。
ただ「交通安全」とか、あんまり普通過ぎると話として成立しなくなりますし、「人類愛」とかのあまりに哲学的だと描ききれなくなります。
なるべくテーマは自分として一応の結論を持つ物。が良いと思います。
斬新なテーマを持つ作品はそれだけで人を引きつけたり出来ます。
逆にエバンゲリオンのように「オタクの自立」なんて自分でも結論が出ていないテーマにいどむと、物語が破綻しまくります。

我々が童話や昔話を面白いと感じるのは、解りやすい教訓をテーマとして含んでいるからなんですな。

要素から物語作る場合はテーマが必須です。
全ての要素をテーマ方向に向けます。
テーマに合わない余分な部分は全部カットします。
それが、気に入ったキャラであろうと、イカスエピソードであろうと、テーマ方向に向いてない物は全部カットです。(勿体ないので別のお話として派生させる事もありますが)
キャラクターも、事件も、会話も、全部テーマ方向に向けて、動かして行くのですな。

時々キャラにテーマを直接言わせてしまう物語がありますが、それはあまり感心しません。
本当に言いたいことは明記せずに、物語の動きによってお客さんに感じさせるのが良い作品だと思います。

結局物語というのは、テーマに向けた運動が全てである、と思いますね。
きっちりまとまった精密機械のような物語が私は好きです。

● 起承転結は世界共通です

物語には基本となる型があります。
一般に起承転結と呼ばれる型なのですが、簡単に言うとS字カーブです。

S字曲線

少し盛り上がって始まり、承の時点で説明などをして、そこからどんどん盛り上げていき、転の部分でクライマックスを迎え、結で落とします。
この話の流れは読者に好まれやすいのですね。
ギリシャ神話だろうと、昔話だろうと、中国の史記だろうと、みんな、おなじ物語構造を持ちます。
人種間、文明間で物語の型に差異が無いので、たぶん脳構造的に、この型は好まれるのだとおもいます。
この構造をとらえると、かなりお話作りが楽になります。
どんな長い物語でも、このS字サイクルが複数つらなった物にすぎません。
S字の流れの斬り方によって、序破急とか、五段作劇とか呼ばれますが、終わりあたりにクライマックスを持ってくるのに変わりはありません。ある国では平坦で盛り上がらないお話が好まれるという事は無いのですな。
セックスの快楽曲線に似ているのではと、いう記事を読んだことがあります。
ひょっとすると、この構造を好むのは生理的なものなのかもしれませんね。

● 型を覚えるには

短編を何本か書くのが効きます。
短い物は構成要素がシンプルなので、型が見えやすく、加工もしやすいのです。
話が捻れていたり、テーマがすり替わっていたりもはっきりとわかりますしね。
短編を書いて、だれかに読んで貰い、批評を聞く。のがお話作りが上手くなる一番の早道だと思います。
まずは基本的な型をしっかりと覚えましょう。
基本も出来ていないのに応用をしても破綻するのが落ちです。

いそがばまわれでございます。

● 物語はイメージの中から出てくる時に必ず変質します

こうやってどんどんイメージを形に変えていくと、物語はどんどんイメージの中の物と違う物に変わっていきます。
でも、その変わっていった物が、物語なのです。
イメージとの違いに怯えてはいけません、必ず変わる物と思ってください。
最初に思いついたシーンが使えなくなったり、イメージの中で輝いていたキャラがいらなくなったり、どんどん変わっていきます。
イメージの時は光り輝いていた物語も、こうやって固まるにつれて、だんだんと小さくみすぼらしくなっていきます。
ですが、その手の中の小さくてみすぼらしい物語こそ、自分が作ったオリジナルな物なのです。誇りに思って良いと思います。誰にも面白いと言われなくても、これは世界で唯一のあなたが作った物語なのですから。
普通の人が最初から面白いお話を作れるわけはありません。
沢山のお話をつくって、だんだんとコツを覚えて、面白いお話が作れるようになるんだと思います。自転車に乗ることを覚えるみたいにね。
幾つも小さくてつまらなくてみすぼらしい物語を作り上げましょう。
だんだんと、物語力が練れてきて、すこしずつ良い物が作れて行くと思います。そうやって練られた物語力こそ財産なのですな。

● まとめ

今回は「物語力を練り込む事が大事なのだ」という言葉で稿をまとめさせていただきましょう。
次回は「プロットの軸を合わせる」について書きたいと思います。


文責:サカナ・ノベル

プロット第一回目「プロットとは何か」
プロット第二回目「イメージは全ての根元」

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