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『デザイン編(4)』

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第三回:同人ソフトにおけるパッケージデザイン(2)

前回は同人ゲームにおけるパッケージデザインのあれこれを、テキスト中心でお伝え致しました。今回はそれらを実際の作例をふまえながら、よりいい感じに見せる為にはどうしたらいいかを、皆さんと共に考えてみたいと思います。

まずはこちらからご覧下さいませ。

こちらは、当サークルのそらちゃのパッケージデータになります。
こうしてみると粗が多くて嫌になりますが(笑)、 一応完成品ということで
こちらをサンプルとして使用したいと思います。


■最初にした事

『空の上のおもちゃ』は、元からかなり雰囲気重視のゲームとして制作を進めていた事もあり、パッケージもイメージを最優先させようというコンセプトは決まっていました。
そこからパッケージイラストを発注し、上がってきたものから全体のトーンを決めて、作り込んでいくのがまず最初の作業になります。(前回書きましたイメージカラーを、青と白で進める方向としてこの辺で再確認します)

主に使う書体は、スペック表記以外は全て明朝系と決めました。これも最初に決めておくと、後からいらない時間を過ごさずに済みます。行き当たりばったりでとりあえず作るような流れになると、結果的に時間がかかってしまう事が往々にしてありますので、最初のコンセプト決めはしっかりやるようにしましょう。

それらが終わったら、画像を実際に置きはじめて、まとまってきたところで文字組みに入っていきます。


■大小のメリハリを大事にする/字間に気を配る

前回書いた上記のポイントですが、今回はいわゆるアオリ文句が少なかった事もありまして、表4(裏側)の上の方に小さめに載せるような形を採用致しました。

で、実際にその部分なんですが…。

まず上のメインコピー。これは自分が内容を見てデザインしながら考えた即席コピーなんですが、ちょっと雰囲気を出す為に『字間を大きく開いて』います。これはデザイン編の第一回で書いた事の復習になりますね。お、上手く繋がりました(笑)。

余談はさておき、何かしらの期待感や空気感を出す時は、こうしてちょっと開き気味の字間にすると、しっくりとはまってくれます。書体については主に明朝系を使用していますが、メインとサブとは少し書体を変えて、変化を付けています。ゴシック系と明朝系が混在すると不格好になりがちですが、同系統の中では比較的アイキャッチ的な意味も込めて、微妙に変化を付けるのは効果的です。その際、メインコピーの方がウエイトの大きい物(太い書体)を使用するようにするのもポイントです。

下のサブコピーは、本来の流れから行けばこれも字間を空けたかったのですが、文量もあってやや詰め気味な字間になっています。その分、読みやすさを出来るだけ出す為に、明朝の細い書体を使って、圧迫感を出来るだけ出さないように心掛けました。あとは、雰囲気をさらにプラスするため、文字部分のバックに、月とメインキャラのシルエットを、邪魔しない程度に配置しました。この辺の工夫も、後から効いてきますのでぜひ試してみてください。

その時々で出来ることを考えながら最善を考えていくと、最終的に妥協の少ない物になっていきますね。


■字の塊を図形にする

とりあえずは、先に作例をご覧くださいませ。


そらちゃのスペック部分ですが、赤で囲ってある部分がこの項目のポイントです。
文字は、その字数や強調するポイントによって、どうしても行毎に数の差が出てしまいます。
これは仕方ない事ですが、そのまま何も工夫せずに配置すると、バランスが悪くなり、本来ならば絵を配置出来るポイントも字で埋まってしまったりと、良いことがあまりありません。

ではどうするかというと、字の塊を、配置しやすいような四角やら丸やらの形状にまとめるのです。

作例をもう一度ご覧下さい。まず一番上の箇所ですが、スタッフ一覧の中でも、微妙にその中で調整をかけながら、図形として長方形になるように組んでいるのがおわかりいただけるかと思います。こういった、項目を細かく分散しやすい文字要素はまだ楽なのですが、問題はその次、動作環境等のスペック部分です。

ここは正直なところ、きれいに図形でまとめるのは難しかったです。で、どうしたかという答えが右下の部分になるのですが、サークル名表記を入れることで、合わせて大きな長方形になるような組み方をしました。これで上の長方形と合わせればなんとかまとまるだろうという感じですね。で、それを組み立てる際に、サークル名表記の部分や、あとはスペックの『サウンド』の項目なんかでも微妙な行替えやらで小細工を行っています。

こうした作業をふまえながら、全ての要素(画像も含む)を、図形で捉えるようなイメージになってくると、レイアウトは非常に組みやすくなってくるかと思います。


■図形で組めないところはどこかで揃える

とは言え、どうしても図形にするのが困難な部分ももちろんあります。

最初に触れたコピーの部分などは、変に囲んでしまうと逆にガチガチになってしまって、イメージの飛躍を妨げる可能性があります。こうした箇所は、逆に囲まずに自由に置くことによって、開放感を出すようにしたいものです。

その他で、スペック表記等でもそうしたケースが出てきた場合はどうするかというと、あくまでも自分流ではありますが、『バックの絵を見ながら大まかに図形に落とし込んでいく』というような事をやります。

これも作例からご覧下さいませ。

キャラ紹介の部分です。
赤でポイントを書いてある通り、バラバラになりそうな各項目を、全て左揃えにすることでまとまりを付けるようにしています。こうすると、線を引いたりは特にしていないのに、目が勝手に補足して、一つの塊として認識してくれるので非常に便利です。自分はよく、上記の図形の話も含めまして、『見えない図形』『見えないライン』とか呼んでるのですが、これを部分部分で活用していくと、驚くほど効果的になってビックリした覚えがあります。(自分も人に教えてもらったんですね)

そしてここでも、字間や文字の大きさの変化を出しているのにお気づきだと思います。メインで見せるポイントはどこなのかを考えながら、その辺りを一つ一つ理由を付けて組んでいくと、まとまっていくはずだと思いますよ。


■細かいポイントとか

上記で挙げたポイントを全て気を付けていけば、自然にレイアウトも固まっていくんじゃないかと思います。まずは自サークルのパッケージで実際にお試し頂くとして、この項では自分なりに気を付けているポイントを小項目でご紹介したいと思います。


・小さな部分を凝る

普通は特に目にもとめないような部分でも、自分は比較的気を付けるようにしています。
その例の一つが下の作例にある部分なのですが…。

18禁マークですね。商業ゲームだとあの不格好極まりないソフ倫シールを貼られてチャンチャンですが、同人なのでその辺も出来ればキレイにまとめたいなと思って、こんなマークを作ったりしました。別にどちらでも良い部分ではあるのですが、こういう小さなポイントの積み重ねで全体の完成度が上がっていくのもまた事実です。
ちなみに、ここの部分も大体縦長の長方形になるぐらいのイメージで作っています。


・文字が見えにくい時は背景に工夫を

文字を置いていくと、どうしても背景の色と被ってしまい、読み取りにくくなってしまう箇所が出てくるかと思います。文字に枠を付けて処理するのもいいですが、変にやってしまうとこれもまた不格好になりがちです。

そういう時は、文字の配置される背景の部分を、前もって少し暗く(or明るく)しておくと、ごく自然な感じで文字を読みやすくする事が出来るかと思います。

lこんな感じでしょうか。あまりやりすぎるとくどくなってしまうので、これも適量が大事です。
ほんの少し色を重ねるだけでぐっと読みやすくなりますので、お試し下さい。


・迷ったらより大きくかより小さく

デザインとして何かしっくりこない、原因がわからないんだけどいいと思えない、そんな時はよくあります。そういう際の対処法なのですが、とにかくメリハリをつけるという方法があります。現状で中サイズで置いてある文字を馬鹿でかくしたり、小さめにしてる文字をさらに小さくしてみたりと、わざと極端な差異を付けてみます。

すると、結構これが見事にはまったり、それ単体はうまく行かなくても、妥協点を探る上で重要なヒントになったりと、意外に使える事がわかるかと思います。大胆に今あるものをぶち壊してみるのは、それこそ陶芸のコントなんかでもよく使われるモチーフではありますが、思い切って何かしらの打破を試みるのは実際理にかなってるのではないかと思います。


■まとめ

パッケージだけに限らない事ですが、デザインにはこれが最高という正解はありません。
上に挙げた内容についても、結局のところ自分が今までやってきた事の経過報告のようなものでして、これがお手本とかそんな事は一切ありません(笑)。

ただ、基本でおさえておくと見栄えのいいポイントというのも確かに存在致しますので、皆さんは上のつたない作例を見ながら、時には反面教師に、時には参考にしながら、いいデザインを目指して頂ければ幸いかと思います。

デザイン一つでゲームの外見は良くもなれば悪くもなりますし、それはしかも絵をイチから覚えたり、シナリオを書いたりするよりもずっと易しいものです。ぜひぜひ、夏コミ前にでもその辺りのコツをつかんで、いい物にしてくださいませ。

>次回から

次回からですが、ディレクションに関する話があまり出ていなかったので、半端マニアソフトや商業での制作を振り返りながら、いいディレクションとは何ぞやみたいな事をやろうかなと考えております。

それでは、また次回ということで…。


半端マニアソフト:木緒なち

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