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すろ〜ふ〜ど
HowTo企画

『文章作法編』



 さて、「はじめての文章作法」その三です。
 今回は「作品を完結させるには」です(もはや作法でも何でもない気がしますが気にしない)。
 
 ネタやあらすじがいくらすぐれた面白いものであっても、最後まで書ききらなければ誰かに見せようがありませんね。
 でも、「ゲームを完成させる」ということにも通じるのですが、最後まで書ききるまでの間には深い溝があるようです。
 一回でもその溝を超えられると自信がつきますが、超えられるまではなかなか難しい。
 
 作品を最後まで書ききるというのはひとつのスキルであって、そのスキルとは最後まで書ききるということを超えて
初めて身に付くものです。
 その経験があれば、次にも生きてきます。
 
 お話を書く、ということはマラソンに似ています。
 先のなかなか見えてこない道を、黙々と一人ですすめていかなければなりません(大勢でシナリオを書くにしても、
自分が担当する部分は自分で書くしかないですし)。
 苦しくて投げ出したくなってくることもありますし、どう進めたらいいのかわからなくなって立ち止まってしまう
こともあるでしょう。
 でも、マラソンとはちがい、ある程度自分でゴールを前に持ってきたり、進みやすい道を用意することができるのが
お話作り。
 
 今回はゴールまでの道を進みやすくするためのことをお話ししましょう。




■「書きたいこと」を見つける■

何か作品を書くのであれば、すでに「こんなお話が書きたい!」「こんなキャラクターを暴れさせたい!」「こんなアイディアを形にしたい!」という情熱のようなものをお持ちでしょうか。
持っているよ、という方はもうその時点で「完結」までのステップをひとつクリアしています。
自信を持って次項へ進んでください。

そうでない方は……ただ漠然と「シナリオ・小説を書きたい」とだけ思っておられるのではないでしょうか。
「創作はしてみたいけど、書きたい・描きたいものがない」というお話をよく聞きます。
具体的に、形にしたい何か、「想い」を見つけてください。
どんなことでもいいのです。
そしてそれは、あなたにしか見つけられません。
それは、作品を書く上で一番大切なことですので……。

シナリオだけでなく、ゲーム作りに関しても同じことです。
「ゲーム制作をしたい」というだけでは、どこかで飽きてしまったり、制作の途中で目的を見失ってしまいます。
「ノベルゲームのシナリオだからこんな感じでいいよね?」「○○(ジャンル)のシナリオってこんな感じに書けばいいんでしょ?」では、ある程度まで書けても、おそらく途中で手が止まってしまうでしょう。
モチベーションの源がないのでは飽きるだけでなく、「なんで自分はこんなことをやってるんだろう?」と疑問が浮かび、結局放り出してしまいがちです。
 
だけど、作品の中に込めたいものがあって、また手を動かすことを苦と思わなければ、案外何とかなるものです。




■書きたいことを箇条書きでメモする■

書きたいことは見つかりましたか?

では次に書きたいことについてのおおざっぱな概要、たとえば「何がどうなってどうなるストーリー」「どんなキャラクターが出てくるの」「その物語に最低限必要な世界設定」などを書き出しておきましょう。
それが、後の項目の「構成」につながります。

「書きたいこと」ひとつとっても、いくつかに分かれるみたいですね。

「勇者が冒険して、さらわれたお姫様を助けるお話を書きたい! だったら勇者はこういう性格で、こんな世界観で……」(ストーリー先行型)
書きたいストーリーがあって、そのお話に沿ってキャラクターや舞台設定を考えてゆくようなやりかた。

「美少女でツンデレで不老不死なヒロインを書きたい。そうするとこういうストーリーかな」(キャラクター先行型)
書きたいキャラクターがいて、そのキャラクターを最も生かせるような話や世界設定などを考えてゆくやりかた。
ここには、『こんな世界観のお話が書きたいな』といった、舞台先行のものもこれに含まれると思います。

「実は地球は宇宙人が作った流刑地だった、なんてアイデアをお話にしたい。だとするとこういうキャラクターがいて、こういうストーリーだと面白そうだ」(ネタ先行型)
書きたいネタ・アイディアがあって、それを生かせるように設定やストーリーを考えてゆくやり方。

あなたは上記のタイプの何型でしょうか。
ストーリー先行型ならば、大抵お話の大きな筋道は決まっているでしょうが、後の2タイプの場合はお話は後からできあがってくることが多いかと思います。
先を迷わず執筆するには、どのタイプでも、とりあえずあらすじ(最初に何が起こって、最後どうなる、程度でもよいです)だけでも決めておくと、行き詰まることが少なくなります。




■適正な分量でかいてみる■

まずは、書きたいことが決まり、方向性も見えてきました。
走り出すその前に深呼吸して「ゴールまでの道のり」を見直し、最後まで書ききることができるものなのかどうか、確認しましょう。

物理的に、大長編や、大勢のキャラクターのそれぞれにきちんとした出番があって活躍もするもの、複雑なアイディア(それがどんなものなのかを表現するだけで時間がかかりそうなもの)は労力を要します。

大勢の素晴らしいキャラクターが活躍する、壮大なスケールの大長編など書いてみたいと思っておられる方もいることでしょう。
でも、初めて物語を書くのであれば、短いもの・なるべくキャラクター数も少ないような、小規模なものからはじめた方が無難です。
書きたいところにたどり着くまえに息切れし、挫折する危険性があります。
(中には、そういった壮大な物語を、初めて書くのにもかかわらず苦もなくさくっと書き上げてしまう方もおられるようですが)

最後まで書いてみるためにも、今の自分の手が届く範囲の分量からはじめてみましょう。
最初の作品に書ききれないことは、ぜひとも「次」の作品に生かしてください。




■構成を立てる■

お話を書くに当たって、「プロット」もしくは「箱書き」といった、お話の構成を書きだしたものを用意しましょう。
プロットは、これから書くお話の、地図もしくは設計図に当たるものです。
お話を書くのであれば、迷ったり、先を確認しながら進んだ方が確実ですし、なるべくプロットは用意した方がよいです。

「考えながら書いていく」「思いつくままに書いてゆく」というやり方もあり、その場合思ってもない展開になったりして、自分でも驚くほど面白いものになる可能性はあります。
……が、途中で何も思いつかなくなったり、お話や設定などの矛盾にふと気づいてしまったりして、手が止まり何も書けなくなる、という危険もあるのです。
挫折の原因で一番多い(たぶん)のは、↑のように「何を書いたらいいのかわからなくなって詰まってしまう」ということではないでしょうか。

でも、以下に書きますように「地図」を用意しておけば、多少足踏みをしても次に進むべき道がわかりますので、より確実に先を目指すことができると思います。

プロの作家さんの中には、プロットを書かないという方もおられますが、ここは初心者、命綱、安全牌と思って用意してみてください。
後に書く「ラン・フォー・カバー」の時にも必要となりますから……。

では、構成の書き方について。
以下は一例ですので「絶対にこうしなくてはならない」というものではありません。
とりあえず基本的で、一番簡単なので、他のやり方に挑戦するときの足がかりにもなりますので、覚えておいて損はないと思います。

まず、書きたいお話を、「起承転結」ぐらいの四部構成にしてみましょう。
「起承転結」とは以下のようなものです(Wikipediaより)
 起 → 物語の導入部。その物語にはどんな登場人物がいるか、どんな世界・時代に住んでいるのか、登場人物同士の関係はどんなものか、なぜその物語は始まるのかなど、これから物語を読む上で必要な知識を紹介する部分。
 承 → 物語の導入である「起」から、物語の核となる「転」へつなぐ役目を果たす部分。ここは単純に「起」で紹介した物語を少し進めるだけで、あまり大きな展開はないのが普通。
 転 → 物語の核となる部分。「ヤマ」ともいわれる、物語の中で最も盛り上がりを見せる部分。物語の中でも最も大きな転機を見せる部分。
 結 → 「オチ」とも呼ばれる部分で、物語が進んだ結果、最終的にどうなったのかを描いて物語を締めくくる部分。

四部構成の一例。

四部構成の一例。

そして、お話全体で書きたいテーマが伝わるものになっているかどうかを確認します。
(これは何も『愛こそすべて』とか『努力・友情・勝利』といった具体的なものではなくても、「勇者の活躍」「かわいいヒロイン」「面白いネタ」でもなんでも、上に書きました『書きたいこと』そのものです)

次に、四つぐらいに分けた各パート毎に「このパートでは何をやりたい、何をやらなければならないのか」を書き出します。
できるだけ完結に、2,3行に纏まるような言葉で書いてゆきます。
そうすると、何がやらなくてもいいこと、ここでは書かなくてもいいことなのかが見えてきます。


パート毎の書き出し。

パート毎に書き出したものの一例。


さらにその「起」のなかでシーン毎に分けて、「このシーンでは何をやりたいのか、何をやらなければならないのか」を書き出します。
「起」のパートで書きたいことが浮き彫りになっているかどうかを確認します。

シーン毎に書き出したもの。

シーン毎に書き出したもの。


そして、シーン毎の書き出しを、承、転、結の中で繰り返してゆきます。

これぐらいまで書けば、お話を書き始めても、先が見えてきて、最後まで書けそうには思えませんか?
でもまだ書き始めるのに不安、書き上がるか不安ということでしたら、さらにシーン1ならシーン1をいくつかに分け、「このシーンの最初の部分では何をやりたいのか、やらなくてはならないのか」「次のシーンでは……」と、同じことを書きだしてゆきます。

いざ、お話を書き始めて、煮詰まってしまったら、この図を見てゆけば、次は何をすればよいのかが自ずからわかり、より迷うことが少なくなってゆきます。

ちなみに「アウトラインエディタ」を使うと楽ですよ。
検索エンジンやオンラインソフト紹介サイトなどで「アウトラインエディタ」を検索してみてください。




■ラン・フォー・カバー■

それでもどうしても行き詰まってしまう、そんなとき。
ヒッチコック曰く「run for cover」。
「映画作りで迷いが生じたら、どんなことがあっても、すぐ確実な地点へ戻って(run for cover)やり直すことだ。
シナリオライターのことであろうと、主題のことであろうと、なんであろうと、疑問が出てきたり、はっきり見定めがつかなくなったら、すぐ思い切ってまた確実な地点へ戻ってやり直すべきだ」
(ヒッチコック『映画術』トリュフォー より)
 
ずっと書いてきて、何を書いたらいいのかわからなくなったら、確実にわかる地点まで戻ってみましょう。
無理に書き続けようとしても、たぶん進まないでしょうし、取り返しの付かない破綻が訪れることになりかねません。
話が矛盾していたり、キャラクターの性格が最初と最後で理由もなく別人になっていたり、世界観にそぐわない設定ができあがってしまったり……。

この場合の「戻る地点」とは、突き放すような書き方で申し訳ありませんが「本人にしかわからない」です。
一度書いた部分をひとまず置いて書き直してみることかも知れませんし、構成そのものを見直すことかも知れないし、キャラクターや世界などの設定を立て直すことかもしれません。
面倒くさがらず、やり直してみると、案外するすると筆が進むようになるものです。





■おまけ■

ここは余談のようなものなので斜め読みで結構です。

人によっては、各場面をばらばらに書き、最後にひとまとめするという方もおられますが。
最初のうちにクライマックスのような、おそらく一番書きたい場面を書いてしまうとそれだけで満足してしまい、「お話を書きあげる」という当初の目的を見失ってしまうということがあります。
なるべくならモチベーション、「書きたい欲」は長く保たせたいものですので、美味しいところは最後ぐらいまで取っておきましょう……。

また、ある作品を書いているうちに他のアイディアが思いついたりして、だんだんとそちらが書きたくなってくる、ということもあるかと思います。
「虻蜂取らず」という言葉の通り、いくつもの作品を執筆しているうちに、どちらもどうでもよくなってしまい、結局うやむやになってしまうなんてこともあります。
できれば新しい作品への情熱はひとまず抑え、その時取りかかっている作品をきっちり最後まで書き上げることを優先した方がよいでしょう。
もちろん、思いついたアイディアなどはどんどんメモを取り、「次」に素早く取りかかれるように体制を整えておきましょう。




■まとめ■

何よりも作品を書くのに必要なのは、「この作品を絶対に完成させたい」という信念と情熱です。
挫折しそうになったり、飽きかけたら、ひとまず手を休め、作品に込めたいと思っていることを見つめ直しつつ頑張ってください。




そんなところで、今回の講釈はここまで。
次回はそろそろ文章編から離れ、絵師の人と相談しつつ、演出についてのあれこれなどをおしゃべりしてみようかと思います。
予定は未定ですが……。

では、また次回!


文責:漣 夏海(グリーンティミルク。)
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