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同人ゲーム制作を語らうゆっくりとしたメディア

すろ〜ふ〜ど
HowTo企画

『企画編』
-後編-
 

引き続き、企画書作成の2回目です。
前回で概ねの構成はできていますので、今回は主にそれを見直していく事にします。

前回同様、これ以下に書いてあることはご覧頂いている方によっては
全く参考にならないかもしれませんが、その際はご容赦ください。


○ 同人ゲーム制作初心者のA君
A 初めてのゲーム制作に胸躍る中学生。ゲーム制作経験者のお姉さんに相談しました。
中学生なので当然ですが、創ろうとしているのは非エロのオリジナル創作です。
現在企画書を作成しています。
○ 同人ゲーム制作経験者のお姉さん
B 年齢不詳のお姉さん。A君からゲーム制作について相談を受けています。
ショタ好きの優しい人ですが、ゲームに関しては厳しい事もサラリと言ってのけます。


■時間の見積もり

Bでは、話を続けるわね。
A君は今回が初めてのゲーム制作ということで、制作にかかる日数の見積もりができていないように思うの
Aうん、そうかもしれない。
Bそこで今リストアップしている素材について、一つ一つ簡単に見つめ直していくわね。
その上でスケジュールを見直すかゲーム規模を考え直すかの判断をしましょう。
Aわかったよ、ではお願いしまーす。
B珍しく素直ね・・・ではまず一番大切なことからよ。
A君の確保できる作業時間は大体どれぐらいかしら?
A平日と休日で全然違うけど、平日は4時間ぐらいで土日は8時間ぐらいかな。
Bつまり毎日そのスケジュールをきっちり守ったとして、週に36時間ぐらいね。
A夏休みとか冬休みはもっとがんばれると思うんだけどね・・・
Bでも、学校のテスト前とか年末年始とか、休みたい時期もあるでしょう?
Aうん、だから少なく見積もってそれぐらいかな。
B(私には十分多く見積もってるように見えるけど・・・)
Aそれで、週に36時間っていうのがわかったけど、それがどうなの?
BCGに関して、前回A君が自分で言ったスケジュールの話を覚えてる?
Aうん、まとめるとイベントCGは週に3枚で12週間。
立ち絵は8体を5週間と背景は写真撮影で1週間。
Bそうね、絵柄にもよるけどそれらは不可能ではない期間だと思うわ。
Aうんうん、もちろんだよ。
Bでも、タイトルやコンフィグなどの画面素材に1週間。
OPやEDがあるのならそれも別途期間を追加しておいたほうがいいわね。
さらにパッケージなどの印刷物にも1週間程度は欲しいわ。
Aふむふむ、つまり20週間+OPEDぐらいだね。
B続いてシナリオに関してね。
こちらはA君の見積もりが甘すぎると思うんだけど・・・
Aそんなことないって、大丈夫。いけるいける。
BA君のゲームシナリオに必要な容量は2.5M。
前回は一日に書ける分量から計算したけれど今回は少し違った考え方をするわね。
A違う考えかたって?
BA君は1日20Kbのシナリオを書くことから18週間という期間を計算したわよね?
それはつまり、一週間(作業時間:36時間)で140kbのシナリオを書くわけね。
A割り算して1時間で4kなら大丈夫そうじゃない?
Bふと聞くけど、A君が今までに書いた文章で一番長いのはどれぐらい?
A夏休みの読書感想文かな。原稿用紙12枚の力作だよ!
Bそう・・・。それってデータ容量に直すとどれぐらいかわかる?
Aえっと・・・・・・??
B全部を文字で埋めていたとして、9.4KB程度ね。10KBに届かないぐらい。
Aあ、あれれ・・・
B確か計算では土日は8時間作業、つまり32KBのテキストが必要なのよね?
A・・・・・ちょ、ちょっとお姉さん!
B原稿用紙で40枚、二日で80枚ぐらいかしら。
Aそれ、僕の1年分の読書感想文より多いよ!
B(この説明は効果があったみたいね・・・。)
A・・・・・・お姉さん、ほんの少し企画を見直したほうがいいかもと思い始めたよ。
Bそうね、私はその言葉をずっと待っていたわ。


■現在のA君の企画書(前回から変わっていません)
ワンシートワンシート キャラクター説明キャラクター説明 あらすじあらすじ 素材見積もり素材見積もり

■ちょっと一息
企画をする人それぞれに、自分の得意分野はあると思います。
A君は比較的CGが得意で作業時間もわかっていました。
しかし一方でシナリオ作業に関してはほとんど何も知らない状態です。
ですので、シナリオのスケジュールは甘く見積もっていました。
同人ゲーム制作でスケジュールを立てる際には、
『自分の担当する作業は本当に可能なのか』を一度チェックしておくといいです。
特に初めて作業する項目は『簡単そうだな』と思っていても予想外の苦労が待っている場合が多いです。



■企画の見直し

Aお姉さん、企画を見直すって言ってもどこを見直せばいいの?
僕、できればストーリーは変えたくないんだけどなあ
Bうーん、実はここから先のことは人によって事情が大きく変わるので難しいのよね。
Aと言うと?
Bサークルの考え方に由るところが大きいの。
たとえばA君は次のうちどれが一番大切だと思うかしら?

1:コミケで新作を出すこと
2:満足いくまでゲームを作りこむこと
3:仲間と一緒に楽しく作ること
4:多くの人に遊んでもらうこと
Aえ? その選択肢だと全部大切だと思うんだけど?
Bそうね、もちろん全部を満たせれば一番いいけれど・・・では今のA君の立場だとどうかしら?
予定通り来年の夏コミで新作を出すなら、多少なりとも素材の量を削る必要があるわよね?
Aうん・・・。
Bそれは言い換えれば『自分の満足いくまでゲームを作りこめてない』って言うことかもしれないわね。
A・・・・・・
Bサークルの考え方次第って言うのはこういうことよ。
自分のサークルが何を重視するかはじっくり考えてね。
A夏コミには間に合わせたいし、ストーリーを変えたくないし、
CGは必要な枚数をちゃんと考えたし、いきなり手詰まりだよ。
Bもっとじっくり考える!!
Aそう言われても・・・じゃあお姉さんの場合どうするかを聞かせてよ。
Bえ、私の場合?
Aうんうん、お姉さんもこういう判断はしてるんでしょう? 参考にしたいなぁ
Bそうね、参考になるかならないかは自分で判断してね。
Aもちろん!
B私の場合、まず最初に企画を考えて、次におおよその頒布時期を決めるわ。
A君みたいに来年の夏コミって感じね。
Aうんうん、一緒だね。
B次にその制作期間から逆算して、自分たちが『準備できる素材数』を考えるわ。
そして『企画書』からも『必要と思う素材数』を計算するの。
その二つを見比べて、あまりにも容量がかけ離れていた場合は企画を没にしているわ。
Aえ、もったいない!!
Bもちろん、いつかは作れるように資料は残してあるわよ。
いつかこの企画を完成させれますようにって。
A完成を冬コミに伸ばしたりとかは考えないの?
Bあまりにも長期の開発になるとモチベーションを保つのが難しいし、
それに元々から開発は予定よりも遅れるとも思ってるのよ。
未来の自分をあてにするより、最初から対策を考えておくぐらいでちょうどいいのよね・・・
Aあ、珍しくお姉さんがブルーだね。
B昔からそうなのよ。
夏休みの予定表を守れた子が羨ましいわ・・・。
Aそ、それで話を戻してよ!
Bそうね。
次に『準備できる素材数』と『必要と思う素材数』に差がない場合は
さらに『必要と思う素材数』を削れないか見直すの。
ポイントになるのは、『企画のテーマ』から逸れた部分を削り落とすことかしら
A『企画のテーマ』から逸れた部分を削り落とす・・・かぁ。
Bそうしてとにかく『準備できる素材数』>『必要と思う素材数』の状態にするわ。
それができれば制作開始ね。
Aうーん、うーーん・・・・・・
Bどうかしたの?
Aやっぱり僕は夏コミに間に合わせることを優先したいと思うんだ。
それで僕の素材見積もりだけど、テキスト容量はプレイ時間30時間って言うことだけで決めたよね。
Bええ、確かそうだったわよね
Aそれってつまりテーマから逸れた部分を削り落とす作業をまったくやってないと思って。
もしかして僕はプレイ時間ばっかり考えて、作品の本質を見てなかったのかなって。
Bそう思ったらどうするの?
Aもう一度見直してくる!
Bはーい、いってらっしゃい。


■現在のA君の企画書(前回から変わっていません)
ワンシートワンシート キャラクター説明キャラクター説明 あらすじあらすじ 素材見積もり素材見積もり


■ちょっと一息
自分のサークルがある期間に素材をどの程度準備できるのかというのは、基本的に一定です。
ですので、その範囲外の素材見積もりをしてしまうと、スケジュールどおり進めるのは不可能です。
『普段の2割増しでがんばれば大丈夫!』なんて思うこともありますが、
制作期間中ずっと2割増しで頑張る事は多分不可能だと思います。



■A君の思案

Aとは言ったものの、そもそも僕ってシナリオは初挑戦なんだよなぁ。
企画書にあらすじは書いたし、それを膨らませればシナリオになるっていうのはわかるんだけど
どれぐらい膨らませればいいんだろう・・・?
30時間ぐらい遊べればみんな満足はすると思ったけど、それは無理って言われちゃったし、
じゃあ僕の企画は一番小さく見積もってどれぐらいのプレイ時間なら成立するんだろう?
AイベントCGの枚数は36枚、もしプレイ時間が30時間だとすると、
1つのイベントで2枚、3枚使ったりもするから2〜3時間に1回のペース・・・。
あ、あれ?もしかしてそれって、すごく少ない??
AイベントCGが入るのは盛り上がる見せ場のシーンが主だから、
つまり2時間以上のんびりした場面が続いて少し盛り上がる。
それからまた2時間以上のんびりした場面が続いて・・・・
これってもしかして不味いんじゃないかな??
A僕のイメージしているゲームはバトルノベルで、主人公はかなり危険な目にあう。
ゲーム中は2つのルートに分岐するけど、どちらにしても息をつく暇もなく次々と敵に襲われるし、
そもそも主人公は考え込むより行動するタイプだ。
A2時間以上もゆっくりしているシーンが続くと、その間を持たせることはできるのかな?
敵のバックストーリーを描くにしても回数が多すぎるし・・・
敵を一人倒したら、次々と新手が登場するような勢いが欲しいな。
Aよし、ゲームスタートからあらすじを考えながら見直してみよう。

最初にキャラクターの位置づけを見せるイベントがある。

そして日常を少し描いた後に、大きなイベント。
魔王が学校に現れる&謎の転校生がやってくる。

そして重要な選択肢。魔王に従うか、戦うか。

魔王と戦うを選んだ場合、魔王の部下になった運動部の主将(2人)と戦う
従うを選んだ場合、謎の転校生とそれに従う文科系クラブの部長(3人)と戦う

最後は魔王 or 謎の転校生と戦って、エンディング
Aまず最初の導入部分は比較的ゆっくり進んでいいと思う。
でも、本筋とは違うからここを強調しちゃうのは不味いので1時間ぐらいかな。

次に分岐後のバトルはスピード感と緊張がほしいから
一人を倒すのに30分ぐらいの連戦。

最後の戦いは前振りも合わせて2時間ぐらいでどうかな?

そう考えると、分岐の両方のルートを足して、多く見積もっても6時間ぐらいで収まる。
あれれ、これぐらいで十分な気がしてきたよ・・・
よし、じゃぁこれでもう一度『素材見積もり』を書き直してみよう・・・・・・。
Aと、いう風に考えたんだよ。
Bそ、そう・・・長く読みにくく、さらにわかりにくい説明をありがとう。
A容量は1/5になったけど、こんな考え方でもいいよね?
一応簡単な予定表も作ったんだけど・・・。
Bそうね、初めての制作とは思えないぐらい色々考えているわね。
Aでしょうでしょう、自分自身の才能にびっくりしたよ。
B天然キャラに見えて、合理的な判断をしてきたので少しびっくりしたわ
A同人ゲーム初のミリオンセラーを作る男だからね!
B(・・・・・・・・・)


■現在のA君の企画書
ワンシートワンシート キャラクター説明キャラクター説明 あらすじあらすじ
素材見積もり新・素材見積もり 素材見積もり簡易スケジュール


■ちょっと一息
A君のスケジュールは何とか期間内に収まりました。
しかしそのスケジュールにはほとんど余裕がないので、実際にはかなり厳しいと思います。
お姉さんも言っていますが、制作期間中(今回の例では10ヶ月)を、
ずっとモチベーションを保ち、予定通りに過ごすことは並大抵の苦労ではありません。
それでも、『準備できる素材数』と『必要と思う素材数』の折り合いがつき、
スケジュールに収まったならとりあえず作ってみなければ始まりません。あとは根気との勝負になります。
A君の場合、特に夏休みの過ごし方が鍵になりそうです。



■企画書の完成って?

Aさて、これで企画書は完成でいいの?
Bそうね、ワンシートにキャラ説明、あらすじ、素材見積もり&簡単なスケジュール。
これぐらいあれば形になっていると思うわ。
Aじゃぁ早速素材の制作に入っても大丈夫?
Bいいえ、次は素材の仕様書を作らないと駄目よ
Aえ、ええええええ!!
BCGの仕様書と、音楽の仕様書、スクリプト仕様書も必要になるわね。
A君自身が担当するCGについてはある程度のメモ書きでも大丈夫だけど
誰かにお願いする部分は仕様書がないと大変よ。
Aそ、そうなんだ・・・。
今のところ書類ばっかり作ってて、ゲームを作ってるイメージがまるでないよ。
B企画者っていうのはそういうものよ。
仕様書は企画書を作るよりも細かく考えないといけないから大変よ。
その分ゲーム内容に近いので楽しいと感じられるかもしれないけど。
Aそうだといいなぁ・・・。
Bあら、もしかして・・・めげてしまったの?
Aそんなわけないよ! でも思っていたよりは大変だなぁって。
B仮に商業制作なら企画もスケジュール管理も、それだけで仕事として成り立つぐらい大変なことなの。
さらに素材の制作まで手を出すとなると、それは大変よ。
Aそうなんだよね。うん、わかった。とりあえず、まだまだ頑張れるよ!!
だから今度は仕様書の作り方を教えてね!
Bえ・・・?!
Aい、嫌なの?
もしかしてお姉さん、僕のことを邪魔だって思ってる?
B(・・・・・・邪魔っていうかこれからの時期は冬コミの作業も追い込みなのよね)
A・・・思ってるんだ?!
Bい、いいえ、そんなことはないわよ
A僕たちの次回更新って、ちょうどクリスマスの頃だよね?
僕、お姉さんと一緒にクリスマスを過ごしたいなぁ
B!!??
(中学生の男の子と過ごすクリスマス Vs コミケの作業 ってこと?!
 それなら、一日ぐらい・・・・・・・)
Aお姉さん、ダメかな??
B・・・・・・A君、あなたは絶対に天然キャラじゃないわね。
Aなにが、どういうこと?
Bわかったわ、そのかわりクリスマスはお洒落をして少し早い時間に来なさい。
Aお洒落? うん、いいよ。
B絶対よ、絶対だからね!(必死)


■A君の企画書 前回と一緒ですが、とりあえず完成
ワンシートワンシート キャラクター説明キャラクター説明 あらすじあらすじ
素材見積もり新・素材見積もり 素材見積もり簡易スケジュール



■ちょっと一息
どの段階で企画書が完成かというのに、明確な決まりはないと思います。
ですので、それぞれのサークルによって色々な個性があると思います。
サークルさんによっては、企画書の時点でシナリオが完成していたり、
すでに立ち絵がそろっているなんて場合もあります。
もちろんそのほうが打ち合わせも、制作もスムーズに進みます。
今まで書いてきたのは、簡単な一例と思っていただけるとうれしいです。

A君とお姉さんの会話は、次回から『仕様書』について
話し合うようにも見えますが実際は内容未定です。

では、ここまで読んでいただいた方、ありがとうございました。



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