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同人ゲーム制作を語らうゆっくりとしたメディア

すろ〜ふ〜ど
HowTo企画

『企画書』
-前編-
 

第一回目は、やはりゲーム制作の一番最初は企画からということで、
企画を作るときに何を考え、どういった資料をまとめているかをお送りします。
とは言いましても、企画書の書き方は人それぞれですので、決まった形はありません。

これ以下に書いてあることは、ご覧頂いている方によっては
全く参考にならないかもしれませんが、その際はご容赦ください。


○ 同人ゲーム制作初心者のA君
A 初めてのゲーム制作に胸躍る中学生。ゲーム制作経験者のお姉さんに相談しました。
中学生なので当然ですが、創ろうとしているのは非エロのオリジナル創作です。
○ 同人ゲーム制作経験者のお姉さん
B 年齢不詳のお姉さん。A君からゲーム制作について相談を受けています。
ショタ好きの優しい人ですが、ゲームに関しては厳しい事もサラリと言ってのけます。


■企画できたよ!

A「お姉さん、僕、ものすごく面白いノベルゲームの企画を考えついたんだけど・・・」
B「だけど、どうしたの?」
A「規模的に一人では作るのが難しいから誰かに協力してもらおうと思うんだけど、どうすればいいかな?
長編だからうまく説明するのも難しくて困ってるんだけど」
B「企画を説明するのが難しいの?」
A「うん」
B「そう・・・それなら作るのは無理だと思うわ」
A「えええええええええ! そんなの酷いよ!」
B「A君が思いついたゲームは、A君一人では作れないんでしょう?
でも他の人にどんなゲームか説明もできないなら、絶対に完成しないわよ?」
A「それはそうなんだけど・・・だから相談してるんだい!」
B「・・・わかったわ。じゃあ企画書は書いてみたの?」
A企画書? それなら僕の頭の中にいっぱい詰まってるよ!
B「(厳しい顔で)A君の頭をスライスすればいいのかしら?」
A「お姉さん、目が本気だよ」
B「A君、同人ゲームを企画する場合はまず大きく二つに分かれるの」
A「二つって?」
B「一人で全部作り上げるか、他の人と共同で作り上げるかの二つ。
一人で全部するなら企画書は頭の中でもいいわよ。
でも、誰かに協力してもらうなら、企画書はその人とって大事な資料になるの。
資料がないと他の人にはどんなゲームかが伝わらないから、協力できない
わよ」
A「じゃあ僕の企画は、一人で作るのは無理だってわかってるから企画書がいるんだね」
B「そう。 もちろん一人で制作する場合も、自分の企画を整理しながら企画書を書くのは有効よ」
A「わかった、早速書いてくるよ!」
B「でも、A君は初めてのゲーム制作だから、
できれば一人で作れるゲームが望ましい・・・って、もういないの?!」


■現在のA君の企画書  - 作成中みたいです -


■ちょっと一息
同人ゲームにおける企画書は何のために書くのか?というと、二つの側面があると思います。
一つは「ゲームの設計図として」、そしてもう一つは「プレゼン資料として」です。
作品を完全に一人で仕上げるのであれば、「プレゼン資料として」の要素は全く必要なくなります。
ですので、完全に企画書が必要ない方もおられます。
でも、そんな人であってもアイデアメモや備忘録は最低限作っておられる事が殆どです。
頭の中だけでは、どうしても忘れてしまったりするのです。



■企画書書いたよ!

A「お姉さん、徹夜して眠いけど企画書できたよー」
B「お疲れ様。 そんなに急がなくてもいいのに・・・とりあえず見せて」
A「うん」
B「・・・・・・えっと、ノベルゲームを作るんだったわね?」
A「そうだよ」
B「キャラクター説明とあらすじだけ・・・その他は?」
A「他って?」
B「このゲーム、どのプラットフォームで動くの? PC-98?」
A「お姉さん、年がバレるよ・・・」
B「コホン! NDSで動くのかしら?」
A「えへへ、このゲームはNDSならミリオン狙えちゃうよ。ファ●通で殿堂入りしちゃうかも」
B「・・・それで本当は何で動くの?」
A「Windowsで吉里吉里ってフリーのツールを使おうと思ってる!」
B「定番ね。では作品のテーマは?ジャンルは?世界観は?頒布時期は?必要スペックは?
・・・・は?・・・・は? は? は?」
A「お姉さん、後半が早口すぎてわからないよ」
B「はぁ・・・はぁ・・・ごめんなさい。 とにかくA君の企画書はゲームの中身だけしか書かれていないの」
A「うん」
B「でもゲーム制作に参加する人は、内容だけでは判断できないの。
企画書を見て、本当に完成できそうかもチェックするのよ」
A「大丈夫、大船に乗った気でいてくれればいいよ」
B「ちなみに聞くけれど、ゲームの文章量はどれぐらい? プレイ時間でもいいけど」
A「30時間ぐらい。月姫ぐらいは欲しいよね!」
B「そんなに大きいドロ船だと失敗すれば大勢死ぬわね・・・」
A「お姉さん、僕の事を信用してよ!」
B「現状の企画書を見た限りでは、全く信用できないわ。 やり直し!」
A「具体的にどう直せばいいか、教えてくれないの??(哀願の目)」
B「(うっ・・・中学生がこの表情はずるいわね) わかったわ、少しだけね・・・」


■現在のA君の企画書
キャラクター説明キャラクター説明 あらすじあらすじ


■ちょっと一息
ノベルゲームの企画書は、キャラクター説明とあらすじが大半になってしまう事が多いです
でも、それだけでは企画書ではなく制作メモになってしまいます。
企画書を読む人も、いきなり長文を提示されては読む気をなくしてしまいます。

そこで、まず最初に以下のものを1シート(A4の紙1枚)にまとめるのがお勧めです。
・作品のテーマ ・世界観の説明(可能ならイメージイラスト) ・動作環境等 (・作品の導入)
1シートですから、スペースに限りがあります。
作品で伝えたい事は何なのか、それを伝える事ができるかどうかをじっくり見つめて書かなければいけません。
また作品の導入は書く事で、読んだ人を第一印象でゲームの世界に導けるかどうかがわかります。



■ゲームの規模を考えてみよう?

B「ワンシートの作品のテーマと世界観はとりあえず定まったとして、
では他にA君が思いつくものを言ってみて」
A「えっと、これぐらいかな。」
 タイトル:魔王降臨
 プラットフォーム:WindowsXp(吉里吉里を使用)
 ジャンル:学園バトルノベル
 プレイ時間:30時間
 頒布時期:次の夏コミ
 頒布価格:2500円
B「そ、そう・・・。 それが可能かどうかは別にして話を進めるわね」
A「うん!」
B「今、A君が言ったのは全部あったほうがいいわね。制作参加者の参考にはなるわ。
でも、まだ不足しているわね。」
A「そう? エロゲー雑誌の紹介に載ってるのはこれぐらいなんだけどなぁ」
B「中学生がエロゲー雑誌を読むなっ!」
A「あ、サークル名や原画家とシナリオの名前、音楽にI've ●oundが抜けてるんだね!」
B「・・・明後日の方向にスルーしたわね」
A「原画:僕 シナリオ:僕 音楽:I've ●ound」
B「音楽は頼むあてでもあるの・・・?」
A「ううん、気分の問題」
B「資料になるんだから、気分の問題で書いちゃ駄目!」
A「わかったよ。 実は音楽は募集予定なんだ。」
B「他にスクリプトや着色、背景は?」
A「スクリプトは友達が手伝ってくれるって。 
着色は僕がやるし背景は、写真にしようかなって思ってる。 撮影はもちろん僕。」
B「ロゴ制作や画面周りのような細かな作業は?」
A「全部僕がやる!」
B「つまりこの企画書はA君以外だと、
音楽を担当してもらう人と友達のスクリプターが読むと思って作成するのね」
A「あ、なるほど。 そうだね!」
B「・・・企画書は見てもらう人に必要な情報は特に重点的にチェックしてね。
今回の場合、詳細は後日仕様書にまとめるとして、
企画書の段階でおおよその曲数と音楽のジャンルは明らかにしておきたいわね。
協力してくれる人はそれを見て、自分のスケジュールから引き受けるかどうか判断するわ」
A「ノベルゲームの場合、曲数って20曲ぐらいが平均?」
B「平均じゃなくて、作品内容から本当に必要な数をちゃんと考えてね」
A「う、めんどくさいなぁ・・・音楽なら余ってもきっとどこかで使えるよ?」
B「それ、音楽を頼まれた人が聞くと本気で怒るわよ?
それから、音楽だけじゃなくCGについても必要枚数は考えておくのよ。
次にスケジュールをまとめる時に必要になるから」
A「え、CGは全部僕がやるのに?」
B「企画者がする作業は大雑把でも大丈夫な場合が多いけど、今回は先行き不安だからきちんとやりましょう。」
A「これでも僕が読んでる限り完璧なんだけどな」
B「それはA君自身の企画だからよ・・・」


■現在のA君の企画書
ワンシートワンシート キャラクター説明キャラクター説明 あらすじあらすじ


■ちょっと一息
A君の企画書にワンシートが追加されました。
最初にゲームの目的やテーマがある事で少しは読みやすくなったかもしれません。
とは言ってもまだまだ情報が断片的で、文字ばかりで読みにくいです。
(実際のワンシートではこのサンプル画像より小さな文字で大丈夫ですので、
 もう少し文章を詰め込めますし、絵素材を見せる事もできます。)
「面白そうに見え」、「読みやすく」、「内容がまとまっている」、というのが理想的です。



■企画段階でのスケジューリング

A「それでスケジュールっていうのは?」
B「大雑把にA君はこれから10ヶ月先の夏コミ頒布を目指してるみたいだけど、それはできることなの?」
A「10ヶ月もあれば十分だよ!」
B「では、今回まとめてきてもらった素材表を見てみましょう
イベントCG:36枚 背景:15枚 シナリオ:プレイ時間で30時間ぐらい」
A「うんうん、少しCGが足りないかなって思ってるんだけどね」
B「A君はCGを1枚仕上げるのにどれぐらいかかるの?」
A「平日は学校があるから、週に3枚ぐらいかな」
B「立ち絵は36枚に入ってるの?」
A「ううん、立ち絵は8キャラクターで差分も欲しいな」
B「キャラクターデザインも含めて、1キャラクターにどれぐらい必要?」
A「メインキャラは4人は各1週間。サブキャラクターは1週間で4人ぐらいかな」
B「背景の写真撮影は?」
A「これは時間がかからなそうだから、全部で1週間ぐらいで大丈夫。 学校にカメラを持って行くし」
B「つまりCG関係をまとめると、
  イベントCGに12週間
  立ち絵に5週間
  背景に1週間 で、全部あわせて4ヶ月半ね」
A「う、うん」
B「次にシナリオだけど、30時間文章を読み続けるとどれぐらいのテキスト量が必要かわかってる?」
A「1Mぐらい??」
B「2.5Mぐらいは必要ね」
A「想像していたよりかなり多いね・・・」
B「A君が毎日10KB書いたとしても、250日だから35週間程度かかるわね」
A「でも、あらすじとキャラクターがしっかりしてるからもっと早く書けるんじゃないの?」
B「(自分の企画に自信だけはあるのね・・・・)」
A「どうしたの、複雑な顔をしてるけど?」
B「私の今まで知っている人の中で、一番早い人で日に50kb程度ね。
それも毎日そのペースでは無理よ。
物書きを本職にしている人で平均すると早い人で日に20kbぐらいね」
A「18週間ぐらい・・・とするとシナリオで4ヶ月半かかるんだね」
B「A君はいつから本職の物書きになったのかしら? 学校はどうするの?」
A「・・・・・・」
B「それに毎日休みなく作業するのって大変よね。
お正月、春休み、GW・・・・・ずっとパソコンの前にいるのよ?」
A「で、できるよっ!」
B「さらにスクリプト作業や画面周りの設計、夏コミ前にCDRで焼くのを入れて計算しても?」
A「・・・ちょっと、無理かも」
B「そう、企画段階では自分で無理か無理じゃないかを考える事が一番大切よ」
A「で、でも無理だってわかったらどうすればいいの?」
B完成予定を先送りするか、
もっと多くの人に協力してもらってA君の作業を軽減するか
それともゲームそのものの規模を小さくするか・・・
ぐらいね」
A「どれも嫌だなぁ」
B「この時点でやる気を無くすようなら、作業に入らないほうが賢明よ。
制作を始めると、もっと辛い現実が待っているわ
A「ええーー僕のミリオンの夢がー!」
B「まだ元気だけはあるようね・・・」


■現在のA君の企画書
ワンシートワンシート キャラクター説明キャラクター説明 あらすじあらすじ 素材見積もり素材見積もり


■ちょっと一息
素材見積もりはおおよそ必要と思われるものをリストアップしましたが、抜けがあるかもしれません。
作りたい物と、制作期間・規模の折り合いがつかないことはよくあります。
企画段階でそれがわかれば、悲しい現実ではありますが幸せです。
それを踏まえて企画を見つめなおす事も、新しい企画を考える事もできます。
ゲーム制作は作り始めが「一番気持ちの熱い時」ですが、冷静な判断をしておくと後々に助かります。
それはとてもとても難しい事なのですが・・・。



後編に続く

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